書評『仕事は楽しいかね?』
仕事は楽しいかね? ディル・ドーテン
★★★★☆
はじめに
実用書というかオシゴト系書籍の中で超有名な小説。
そのうち読みたいと思っていたら、Kindle Unlimitedで発見しました。
ちょっといろいろなことにモチベダウン中のときだったので、自分で本を探すよりも、世間様の評価が高いものを読んでみることもよいと思ったのです。

- 作者: デイル・ドーテン
- 出版社/メーカー: きこ書房
- 発売日: 2015/01/19
- メディア: Kindle版
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本書は、仕事に悩めるサラリーマンと謎の老人の会話だけで、ストーリーもへったくれもありません。
第3章
試してみることに失敗はない - Location: 223
ふむ、よきおことば。
第4章
人々は精神分析医のところへ詰めかけ、『〈ずっとしたいと思っていた〉仕事をしているのに、なぜか〈やっぱり幸せじゃない〉んです』そういう人は、計画をたてることに依存しすぎてる。僕が〈目標の弊害〉と呼んでいる状態に陥っているんだ。
- Location: 263
〈目標の弊害〉については、書評『目標の研究』で触れています。 というか、『目標の研究』は本書を読むきっかけの一つです。
euphoniumize-45th.hatenablog.com
「頭のいい人がする一番愚かな質問は、『あなたは五年後、どんな地位についていたいですか』というものだ。 (中略) どんな地位についていたいかなんて質問は、大嫌いなんだ。僕はこの先、今とは違う人間になっていこうと思っている。だけど、いまから五年後に〈どんな人間に〉なっていたいかなんてわからないし、〈どんな地位に〉ついていたいかなんてことは、なおのことわからないよ」
- Location: 285-287
しがないサラリーマンなので、これは年次の査定とかでよく聞かれる質問です。 正直、「知るか!」という感想しか湧かないですよね。 毎回どうにか取り繕ったようなことを喋ってますが、欺瞞ですわ。
ただ「これをやっていたい」というようなことはあるので(もちろん本心で)、そこは見据えていきたいです。
さて、本書では「今とは違う人間になる」というフレーズが頻出します。上記の引用にも含まれます。
現状のままでいるのではなく、何かしらの変化を(ないなら意図的に)起こすこと。少なくとも「生きて」いるなら。
www.deportareclub.com 関係ないけど、このジムのコピー「存在するなら、進化しろ」って良くないですか?(通ってません)
本書の内容に戻りますが、ここのポイントは「進化」とか「成長」とか言ってないところだと思います。
特に注意しておきたいのが、「変化」に際して、目標を立ててそれに向かっていく必要はないということ。
詳しくは後の章で解説されます。ここでは、もう1つ前の引用文でも触れていますが「目標の弊害」に陥ってはならない、というところだけ押さえましょう。
第5章
"遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る" - Location: 357
どこへ向かっているか、自分でもわかっていないけれども、「いろいろやって」いる。本書では、「成功している人」はそのような生き方をしている、と分析しています。
個人的には割と好きな考え方です。 というくらいに軽く思っていたら、後の章でブチのめされます。
第7章
何を試してきたのかね - Location: 536
あなたは、これまでの人生で、実際に何を試してきましたか? 「考えた」ではなく、実際に試したことです。
この「試す」ことこそ、本書の最重要メッセージです。
人は、変化は大嫌いだが、試してみることは大好きなんだ。 - Location: 754
試すだけなら、私も大好きです。
変化は、自分がそれを求めたとしても難しい。意識的にも無意識的にも。このへんは「ホメオスタシス」でググりましょう。
ましてや他人に変化を求めるのは、ある意味特殊なスキルとも言えます。営業さんとかスゴイですよね(スゴイ人は)。
第8章
「ある事柄が完璧だと決め込んでしまったら、その事柄はそれ以上よくならず、ライバルに追い抜かれるのをただ待つだけだ。その結果言えるのは――彼の言葉をそのまま繰り返すと――"完璧とは、ダメになる過程の第一段階"ってことだ」
- Location: 735
まぁ、これも言われればそうかな、という気はします。
「完璧」を達成したとして、それを超えるものを生み出すことができるのは、能力やモチベーションなど種々の条件を考えると、ほんの一握り。
できれば、そうありたいものですが、さて。
第10章
平凡であることは難しく、創造的であることは易しい - Location: 941
平凡な人間にとっては、たいへん勇気づけられる言葉のようですが、実は真逆。 待て、あわてるな、これは(略
問題は、平均より上の人があまりに多くて、みんな普通になってしまっているってこと - Location: 944
もちろんこれは、人類の進化という観点では良いことです。
しかし、本書の主人公のように、仕事に悩んでしまったりしている個人にとっては、なかなか厳しい現実です。
それが成功のための標準的なアプローチだ。もっと多くのことをしろ。 - Location: 950
これもそのとおり。 ただ、もうすでに多くのことをやっている人は、どうすればいいんでしょうね…
もちろん、本書でもそれに対する回答も書かれています。ポイントは、「多くのこと」って何?ということ。
第11章
もし宇宙が信じられないような素晴らしいアイデアをくれるとして、きみはそれにふさわしいかね? - Location: 978
自分がアイデアを生み出すのか、それとも、アイデアが自分を選ぶのか? (アイデアが)来る時に十分に対応できるように備えろ、と。
例えば音楽や小説をつくるとします。素晴らしいフレーズ(だけ)は思いついたのにスキルが足りずにイマイチ活かしきれない、といったことは、作る側の人間にとっては割と「あるある」なことかと思います。
第12章
さっき話した人たちはだれ一人、立派なビジョンを持って、それに向かって突き進んだわけじゃない。彼らはみんな、目標設定者でも計画立案者でも〈なかった〉。彼らは冒険者だったんだ」 - Location: 1315
この真理は、生物の進化に近いものを感じますね。
ホモ・サピエンスが生き残ったのではなく、生き残ったのがホモ・サピエンスというわけです。
ここで誤解がないように書いておきますが、著者は目標や計画を立てることを否定しているわけではありません。
未来の先の先まで、すべて計画通りに進むわけではない。思い込みすぎるとそればかり目が行ってしまう。
それよりも、計画外であっても、無計画であっても、いろいろなことを試すことを勧めているわけです。
また、本書では触れられていませんが、優れたアイデアを、タイミングよく得られたとしたら、その後は計画も必要かと思いますよ。
第14章
「アイデアをいっぱい持つこと。ありとあらゆることをやってみること。明日は今日とは違う自分になること。そして朝を待ち焦がれる、幸せなサムライの一人になってくれ」
- Location: 1484
これまでも紹介したように、本書では「試す」ことについて、最重要アクションとして取り上げられています。
この引用文が良いことを言っているのもわかります。
しかし、だいぶ酷じゃないですか?
言い換えると、モチベーションについてはほぼ触れられていない。
ほぼ同じ事を言っている『ライフハック大全』は、モチベーションや生活のことにまで踏み込んでいました。その点で言えば、本書は「仕事」の観点での書籍であり、またそこが本書の限界であるようにも思えます。
euphoniumize-45th.hatenablog.com
全体の感想
だいたい良いこと言っているとは思いましたが、ツッコミたいことや気になることはいろいろあります。
試すこと自体が好きだとして(それも無茶ぶりな気もしますが)、何を試すかについては触れられていないのです。
好きなことを試せばいいと思いますが、好きなことがない場合もあります。 試していった結果、その内容が難しかったり、周囲の環境や条件が合わずに、続けられなくなることもあります。 それについては、本書は触れていません。
人生いついかなるときも、刮目して見よ! と。ふーん。
まとめ
一読はしておきたい本ですが、一読でいいかなという感じです。 最後はマスター・ヨーダの名言。
人生きびしいーわー