木牛流馬は動かない

テクノロジーや気付きによる日常生活のアップデートに焦点をあて、個人と世界が変わる瞬間に何が起きるのかを見極めるブログ。テーマは人類史、芸術文化、便利ツール、育児記録、書評など。

木牛流馬は動かない

書評『やる気クエスト』

『やる気クエスト』全6巻

純コミックス
岡野純 (著)
佐々木正悟 (著)

やる気クエスト(6) (純コミックス)

やる気クエスト(6) (純コミックス)

★★★★☆

気付いたらTwitterばかり見てしまっているアナタ、必読です。

あらすじ

「やる気を出す方法」がファンタジー漫画でわかる!(全4〜5巻で完結予定)

会社員ジュンが迷い込んだのは、魔王によって「やる気」を奪われた人々の世界。 「やる気」はいつ、どのようにして奪われているのか? 「やる気」を取り戻す方法はあるのか?

魔王の正体と真意に近づくにつれて、ジュンとその仲間たちは「やる気」に関する驚くべき真実に気付いていきます。

Kindle年間ベストセラーにもなった『マンガでわかる!幼稚園児でもできた‼︎タスク管理超入門』の著者・岡野純と、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』など50冊以上のビジネス著者であり認知心理学のエキスパート・佐々木正悟が贈る「やる気」をめぐるファンタジー漫画がここに登場!

やりたいことがあるのに、どうにもやる気が出ないというあなた。 やるべきことがあるのに、ついつい他のことをしてしまうというあなた。 ぜひあなたもジュンたちと一緒に、「やる気」の秘密を解き明かしてみませんか?

Amazon作品紹介より

仕事に趣味に勉強に、日々やるべきことは盛りだくさんです。 しかし、つい別のことをやってしまう。

思い通りにやる気を出すのが難しいのは、皆さんも日々感じていることではないでしょうか。 「そんなことはない、オレは毎日あふれるやる気を使いこなしているぜ!」という方は、本書は必要ありませんので、別の記事でも読んでいってくださいませ。

さて、そのやる気をどうすればコントロールできるか。 そのスキルをストーリー仕立てで分かりやすく身につけることができるのが、本書『やる気クエスト』になります。

実は、著者ブログを以前から読んでいたので、制作中に数ページずつ公開されていたのは知っていました。 途中で追うのが止まってしまっていたのですが、つい最近Kindle Unlimitedで発見。 これは読むしかない。数時間でイッキ読みしました。

やる気はあるんだよ

まずはなぜやる気が出ないか、を考えていきます。 本書では「やる気を奪われる条件」と表現されていますが、どんなものがあるでしょうか。

  • やったことがない、やり方が分からない
  • 簡単すぎて自分がやるまでもないと思っている
  • やりたくはないけど、やらなきゃいけないから、イヤイヤながらやる
  • やったところで意味がないと思っている

思い当たるものが最低1つはあるのではないでしょうか。 これらはやる気のなさの原因であると同時に、やる気を出すための重要なヒントになっているのです。

「やる気を出す地図」を完成させて、やる気をコントロールしよう!

標題の「やる気クエスト」とは、空白だらけの「やる気を出すための地図」を埋めること。

f:id:euphoniumize-45th:20180219215221p:plain 本書より引用。初期版とはいえ空白すぎでは?

そのために主人公(勇者)は、やる気のないチームメンバー(剣士、魔法使い、武闘家)とともに旅に出ます。 コテコテのファンタジーです。こういうの好き。

本書のクエストの優れたところは、ファンタジーだけでは「やる気を出す地図」は埋まらないこと。 ファンタジー世界で身につけたやる気のスキルを、リアル世界でも同じように実践しなければ、身につかないのです。

冒険を続けるうちに、勇者はやる気についていくつかの真実を発見します。

もし「やる気」が増えたり減ったりするものだと言うのなら… 「やる気がない奴」はやる気を「出さない」んじゃなくて 量が足りなくて「出せない」だけだった可能性がある!

第4話「やる気のない人とある人の違い」より

そもそも、やる気はある/ないの二値ではなく、増えたり減ったりするものだそうです。 これはまぁ感覚的にそうかなと思いますが、私にとってはまず、やる気を「量」で測ることが驚きでした。

やる気そのものを数値化するわけではありませんが(単位もないし)、やる気を出すための周囲の環境や条件を数値化することはできます。 そして、自分の行動も。

そのためには、まずは記録が必要になります。 昔から人類は記録と分析を繰り返して発展してきたわけですが、現代のデジタル技術はこの点を超効率化したわけで、これを使わない手はありません。これこそIT革命の一番の恩恵ではないか、とすら思えます。 では、どんなツールで記録していくかというと、それは本書にて。ヒントはGTD

そして記録を分析し、ルールを抽象化し、ノウハウとして一般化していく。 ごくごく当たり前の流れですが、これをあらゆる角度から繰り出すことで、やる気の正体を見極めていこうというわけです。

(やる気がない)

やる気が出た時の条件を記録、分析、仮説を立てる

仮説に基づいて実験し、仮説を検証する

やる気について理解する

やる気のコントロールを理論に基づいて実践

次のステップへ

これは私が勝手に並べただけですが、これを見て分かるように、しっかりと論理立ててやる気について分析しています。認知心理学の裏付けもあるようですし、自分の感覚とも合うことから、だいぶ正確なやる気の研究成果ではないかと思います。

分析だけでなく、主人公たちはクエストをこなしながら1つ1つ「やる気を出すための地図」を埋めていくことで、「必要なやる気の量」を把握し、コントロールすることができるようになっていきます。

本書では「今の」やる気の分析だけでなく、長期的なやる気についても触れられており、これは本当にありがたみしかないです。

もうね、本当は全部の内容をこの場で書き散らしたいんですが、ネタバレになりすぎるので。 気になる方は本書を読んでくださいませ。

まずは5分だけ

とか書いておきながら早速1つネタバレしてしまいますが、本書では可視化の方法としてタスクシュートを使います。

やはりタスクシュートに代表されるGTDベースのツールが分かりやすい。 基本に忠実なやり方のほうが、結果的に長期に渡って使えるものです。

まぁ、私はタスクシュートは(試しましたが)使ってなくて、「今のやる気」を出すためにはBoostenote、「長期的なやる気」のためにはTrelloを使っています。テヘペロ

さて、本書で個人的に一番共感したのが、「始めてしまえばやる気は出る」というフレーズ。

洞窟を「攻略する」やる気を事前に出せなくても… 洞窟に「入ることだけ」にやる気を使えるればいい! つまり「終わらせよう」とするのではなく、「始めよう」とするだけで良かったんだ!

第17話「やる気の洞窟」より

仕事で重たいタスクが控えている時など、「腰が重い」ことがどうしてもあります。 このブログを書くのも、好きでやっていることですが、やる気が出ないときもありますし。 そんなとき、最近は(なるべく)このフレーズを思い出すようにしています。

始めてしまえば、やる気は自然と湧いてくるんです。 これは感覚として皆さんも分かるんじゃないかと思いますが、ほんの少しだけ、5分だけ、先っちょだけ、というわけです。 始めるハードルを思いっきり下げてみるというノウハウです。

もしこの「最初の5分」でちょっと気になって部屋の掃除なんか始めてしまうと、それは「脳への裏切り」となり、やる気が失われていきます。これがその場限りならいいんですが、習慣として続きかねないのが恐ろしいところ。

ちなみに私は最近『ドラゴンボール』を読み返しておりますが、PCの起動待ち時間とかに読み始めてしまうと、もう止まらないですね。 最近では、PCを起動しっぱなしにしたりスムーズな起動のための小ネタを仕込んだりして、なるべく妨害される余地をなくしていく工夫を考えています。 それにしても久しぶりに読み返したけど『ドラゴンボール』の面白さは、今でもハンパないですわ。

さて、脱線から戻ります。 「最初の5分」を無駄にしないために重要なのが、その5分で最初にやる作業をあらかじめ決めておくこと。 「始める」ことに対してハードルを思いっきり下げてしまうよう、あらかじめ最初にやる「小さな」作業を決めておくのです。 プログラミングを勉強したいならVisualStudioをスタートアップに登録しておく、というふうに、自動化してもいいかもしれませんね。

このことは、本書では勇者のモノローグとして語られていました。

「行動を具体化」して やる気を「行動」に使えるようになればいい! そうすれば、やる気を「転用」しないようになる 「はじめの5分」にやる気を使えるようになる!

第18話「やる気にまつわる伝説」より

まだまだ「最初の5分」をコントロールしてきれていない私は、クエストに旅立たなければならないようです。

まとめ

本書は、ライフハック本のつもりで読み始めましたが、「やる気」という感情の動きをキッチリと整理分析しており、むしろ心理学の本を読んだ感覚に近い感想をもちました。

なにより、著者が会社員をやりながらこれだけ素晴らしい作品を作り上げた、という事実にやる気をもらいました。比べるのもおこがましいくらいですが。

ところで、「やる気クエスト」ゲームアプリのリリースはまだですか?

やる気クエスト(1) (純コミックス)

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