木牛流馬は動かない

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書評『目標の研究』

「目標」の研究 倉下忠憲

「目標」の研究

「目標」の研究

★★★☆☆

きっかけ・期待

ライフハック大全』を読んだら、Amazonからオススメされました。

euphoniumize-45th.hatenablog.com

あらためて考えてみると、目標設定って難しいんですよね。 このツイートがすべてを言い表しています。

タスク管理などいろいろ試しているつもりですが、そもそも目指す先の「目標」について、そういえばロクに知らないなと、読んでみることにしたわけです。

要約・感じたこと

Chap.1 三つのお話

目標と目的の違い。まずは定義。

位置: 222 目的とは、ある行動を通して得たいもの・結果・成果を意味する。目標はそこに向かうための目印、あるいは矢印

目的が最上位にあり、そのサブセットとして目標がある。

位置: 285 なぜ目標の設定が目的達成の役に立つかと言えば、一つには、こうした行動群に方向性を持たせられるからだ。目的を達成するためにAの行動が必要ならば、一日の行動の中にAを増やせば良い。簡単な理屈だ。こうした行動の制御が、目標設定の第一の役割である。

目標のある行動(群)は「プロジェクト」と言い換えることができるかもしれません。行動は、時間の使い方。これを制御して「方向性」をもたせようというわけですね。ふむ。

Chap.2 目標とは何か

位置304 私達の日常は「実行者」の視点で満ちあふれているので、「計画者」の視点で必要な行動を明らかにし(モチベーションアップ)、実際にそれらの行動を実行に移していくようにする。これが目標設定の役割である。逆に言えば、そうなっていない目標設定は根本的に機能しない。

プロマネ様はあなたの心の中をウロウロしていません。あなたが自分自身のプロマネにならなければならない。

誰か管理してくれないかなー。美人秘書とか。

Chap.3 目標の弊害

著者は、取扱い注意が必要な目標として、以下を挙げる。

  • 忘れ去られる目標
  • 曖昧な目標
  • サイズ違いの目標
  • ずれた目標

「大変申し訳ございません。。。」という感想しか出てこないわ…。

位置: 304
私たちの日常は「実行者」の視点で満ちあふれているので、「計画者」の視点で必要な行動を明らかにし(モチベーションアップ)、実際にそれらの行動を実行に移していくようにする。これが目標設定の役割である。逆に言えば、そうなっていない目標設定は根本的に機能しない。

実行の前に、しっかり考えて計画を立てる。 実行中は目の前の作業に集中する。

言っていることはこれだけですが、重要な視点。

実行中に考えるべきは方法論。 実行中に「行き先」を考えていては、作業も進まず「行き先」にもたどり着けず、ということになりかねません。

実行者の視点と計画者の視点を、適切に使い分ける。

Chap.4 機能する目標に向けて

位置: 646
ここからわかることは、人生にとって一番大切なこと(最大の目的)は、簡単にはわからないということである。そして、時間をおいてミッション・ステートメントを書き直すことは、実はボトムアップなのだ。言い換えれば、ボトムアップ・アプローチで、トップダウンに機能するもの──最大の目的──を見出すわけです。

「人生にとって一番大切なこと」をまず設定し、トップダウン・アプローチでそこからブレイクダウンして小目標を設定できれば、たいへん気持ちの良い計画が立てられると思います。しかし、目標とはそんな簡単なものではないのです。

まず小さい目標を設定し、実行し、これを継続していくことで、ようやく大きな「本当の」目標が見えてくる。 大きな「夢」レベルならいつ見てよいと思いますが、具体的な作業に落とし込むための「目標」は、いきなり大きなものはむしろ弊害となりうるのです。

位置: 674
またドラッカーは、セルフマネジメントにおいても、同様の問いを重視している。 これに対し、知識労働の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、「何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」である。手っ取り早く、しかも、おそらくもっとも効果的に知識労働の生産性を向上させる方法は、仕事を定義し直すことである。特に、行う必要のない仕事をやめることである。

個人的に、ここが一番刺さりました。 著者には申し訳ないですが、さすがドラッカー先生といったところです。

なんのために、なにを行い、どう実現するか。

私事ですが、転職したときの仕事上の最も大きな変化が、入った企業が「やらないこと」を決めるのに躊躇ない文化であったこと。 前職では、実行順序は考えても、実行の是非を考える人がほとんどいなかった。 最初は「そんなことしていいの?」と戸惑ったものです。 しかし意外なことに、ちゃんと理由を説明すると納得してくれるお客さんも多い(そうでない場合もありますが)。 思った以上に、効きます。

これを個人の知的生活にも生かしていきたいところです。

Chap.5 人生にとっての夢や目標

位置: 771
私たちがまっさきにやるべきことは、「今自分が生きている」ことを肯定することだ。それがどれだけちっぽけに見えても、実はその背後にたくさんの物事や、人と人のつながりが支えてくれているのを知ること

これは大前提。

これができていない人と話すと、とても居心地が悪い。 なんというか、自分で自己否定している人を、なぜか周囲がフォローするよう気を遣わないといけない感じだから。 そう言ってほしいだけかもしれません。 ま、私はあんまりフォローしませんが。

位置: 875
しかし、だからこそ、計画や目標といったものが意義を持ちうる。逆説的ではあるが、人生が制御できないからこそ、目標は役立つのです。

人生も計画も目標も、制御はできないし、想定どおりに進まない。 かといって、思考を放棄しては、何も達成されず、人は人でなくなる。

最近読んだマンガに以下のようなフレーズがありました。

この音とまれ!アミュー

深く考えたこと・考察・反論・疑問

本書のキモは、目標の立て方へのアプローチ。 ざっくり言ってしまえば、一発でカンペキな目標を立てようとするのではなく、継続的にアップデートすることを前提に目標を立てましょう、ということになります。

本書には、なぜそのアプローチを取るのか、その考え方の根源、具体的な施策、陥りがちな思考の罠について、事細かに書かれています。

ある期間で自分がどこまでできるか(やれるか)という見積もりが、目標の設定と達成に大きく関わります。

一般的に、見積もりはとにかく厄介で難しい。 なにか明快な基準があるならともかく、新しいことをやろうとするとまったく先が読めないこともしばしば。 個人的には、特に時間の見積もりが最も難しいと感じています。

見積もりスキルを上げることは、すなわち目標と自分の実力の差異を縮めることを意味します。 そのためには、それぞれ(目標設定スキルと自分の現在のスキルの見極め)の精度を上げる必要があります。 まぁ結局、数をこなすしかないのですが。

本書は、そのための方法論というか思考のガイドラインといった内容がまとめられています。 知っている内容も多かったので評価は★3つにしましたが、名著だと思います。 すでに自分のやり方を確立できているならともかく、もし目標が機能していないと感じているなら、あるいは目標について考えたこともないと気付いたならば、一読をオススメします。

次のアクション

本書を読んで改善の方向性は見えた気がするので、実践を考えます。 自分のプライベートの活動は、もともと本書提案のアプローチでやっていたので、目標設定がうまく回り始めていると思ってます。 次は仕事上の目標設定(年次の査定のやつ)に活かせないか、考えたい。来年から本気出す。

参考・リンク