人類の未来を垣間見る / 書評『サピエンス全史』(8/8)
これまで8週間に渡って投稿してきた『サピエンス全史』書評シリーズ、今回でようやくラストです。
※このエントリーは、書評『サピエンス全史』シリーズの8回目です。 前回はこちら。
今回は未来のお話です。 人類に明るい未来は待っているのでしょうか?
www.youtube.com (↑本書に全く関係ありませんが、BGM代わりにどうぞ)
次の人類は?
『ジュラシック・パーク』のように、恐竜やマンモスを再生してしまおう、という計画があるらしいです。
更には、なんとネアンデルタール人をも再生するとかしないとか。
両プロジェクトとも続報がなく本気度がイマイチ見えませんが、もしこれが頓挫していたとしても、また同様の計画が持ち上がるのは必然でしょう。我々の生きているうちに実現するかは分かりませんが。
そこでひとつ懸念が。
ホモ・サピエンスを取るに足りない霊長類から世界の支配者に変えた認知革命は、サピエンスの脳の生理機能にとくに目立った変化を必要としなかった。大きさや外形にさえも、格別の変化は不要だった。どうやら、脳の内部構造に小さな変化がいくつかあっただけらしい。したがって、ひょっとすると再びわずかな変化がありさえすれば、第二次認知革命を引き起こして、完全に新しい種類の意識を生み出し、ホモ・サピエンスを何かまったく違うものに変容させることになるかもしれない。 - 『サピエンス全史』
ホモ・サピエンスは、(大型動物のうち)最弱に生まれながら、認知革命によって地球上最強の種の座を手に入れました。
そんなサピエンスは、生物工学や遺伝子工学の技術発達によって、更なる認知革命を意図的に起こすことができるのでしょうか? あるいは、再生に成功したとして、その再生ネアンデルタール人には認知革命が発火することはあるのでしょうか?
ちなみに、著者は続編『Homo Deus: A Brief History of Tomorrow』を昨年出版しています。これは未読ですが、「データ」をテーマに、未来の人類の話が書かれているとのこと。 日本では、先日ようやく翻訳権の獲得のニュースがあったところなので、出版は来年でしょう。楽しみ。 英語がもう少し出来たなら、今すぐにでも読みたいところです。
また、もう少し近い未来(10〜30年後程度)については、本ブログでもたびたび紹介していますが、以下のブログがオススメです。 最新テクノロジーのキャッチアップと未来予測に関しては、専門家でもないなら、こちらのブログだけで十分かと思えるレベル。
高城剛について
最近「多動力」というバズワードがあります。 イーロン・マスクやホリエモンなんかがそれを体現する代表的な人物かと。 高城剛は、これを数年前から提唱してきました。
なぜ突然(でもありませんが)高城剛かといえば、本書『サピエンス全史』の未来編に書かれていることは、高城剛のメールマガジンで言われていることとほぼ同じような内容だったからです。 そのため、本書の未来関連の内容はなかなか刺激的で十分素晴らしいのですが、個人的にはあまり目新しさはなかったです。
いったい、人類はどこからやってきて、どこにいくのだろうか? かつて、このような答えがないとされる命題は、哲学と呼ばれていた。だが、いまはテクノロジーの仕事なのではないか。近年、すべての人類をDNAから辿ると、アフリカの一人の女性にたどり着くことがわかったように、あらゆる人類史は、もうじき明確にわかるのだろう。 -『多動日記 (1)』高城剛
彼について思うまま書き連ねてみると、最新テクノロジーに詳しく、しかし現代の科学技術だけを盲信せず、世界中の民俗や宗教やストリートやあらゆる価値観を体験し、しかも最新の政治経済情勢はどこのメディアよりも新しく裏の裏まで知り尽くし、なにより自分自身が体験したことでしか物事を語らない、そして人生を楽しみ尽くすことに誰よりも長けている、といった感じ。
これは単なる妄想ですが、仮に人類がどうにか意見を一つにまとめ上げ、その種としての未来を意図的にデザインしたいと思ったとします。 種でなく、国単位くらいでも構いません。 そのとき、そのコンセプトをつく(れ)るのは、私は高城剛しかいないと思うわけです。 彼の仕事は「ビジョン」をつくることであり、これは(今の)政治家ではできませんからね。
CATALYST #03 高城剛に聞く 人類は新たな進化を迫られる https://t.co/doJMZv0jaG
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2017年7月1日
なにが言いたいかというと、この混沌の時代に周囲(の生み出す虚構)に惑わされずに自分の実現したい未来を見据えて現実の情報を見極めて計画的にいきましょう、とかそんなことではなく(!)、『サピエンス全史』に未来の話はあまり期待しない方がいい、ってことです。少なくとも私の感想としては。
彼については今後もちょいちょい紹介していきたいです。 メルマガは有料ですが、マジで本当にオススメです。
郷に入れば郷に従わねばならない世界と、まったく逆の世界が並行して存在するようになると考えています。このふたつを高速に行き来できる人だけが「その次の世界」に行けるようになると僕は考えているのです。総数の0.07%程度。僕はそれを「およそ10万年ぶりの人類の進化」と呼んでいます。
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2017年7月13日
100年後、あの時人類は変わったと。あらゆるもの、生き方が変わったと言われるようになる。
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2017年7月7日
3年後のことなんて、わかりません。自分も社会も国家も世界もすべて。それが、未来のたったひとつの事実です。
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2017年7月1日
高城剛は、次の「大きなイベント」は2018年に欧州で起こる、と予言しています。
次の時代のベース
本書は、虚構という新しい視点で歴史を再解釈した名著です。 Amazonビジネス書大賞を受賞するまでもなく、間違いなく現代最高峰の書籍の1つでしょう。
我々が本書から得る知識と洞察と驚きはとても大きいものですが、それでも、読んだだけで満足されては困るのです。
少なくとも我々現代人には、以下のツイートが普通であるような状態が求められます。
#サピエンス全史 :高校時代の英語の先生が言ってたことー英語はね予習をしなくてはいけません。必ず授業の前に今日やるところを予習してください。そして完璧な予習というのは「今日の授業では何一つ教わるところはなかった」という予習です。 …つづく
— ふゆき (@YoneyamaFuyuki) 2017年6月18日
#サピエンス全史 : を読んで英語の先生のこの言葉を思い出した。ここに書かれていることは教養。現代人の必須とする教養の一部がここには書かれていてこの程度ならそれを読んだ結果として僕たちは本来「この本から教わることは何一つなかった」と言えなければならないということだ。
— ふゆき (@YoneyamaFuyuki) 2017年6月18日
本書はあくまでベースであり、知識に過ぎません。 本書を読んだから教養があるわけではないのです。 私も(まだ!)ないので、5000兆円より教養が欲しい。いや、やっぱり5000兆円も欲しい。
もとい。本書は今後の世界を語る上で礎の一つとして扱われる作品になるでしょう。 我々は次の時代を語り、作るときには、これまで見てきたように、先人がそうしたように、歴史に学ぶ必要があります。 さもなければ、今後「新しい虚構」が現れたとき、もしくは「新しい人類」が生まれたときに何が起こるか。
具体的なできごとは分かりませんが、およそ分かりますよね。 私もあなたも、虚構を持ち虚構に生きているのだから。
世に真怪は多くあれど
虚怪もまた多くあり
虚構は虚構に戻れ
嘘から出た怪物は
嘘によって滅びる
- 『虚構推理』城平京
最後に
今回の書評シリーズは、本書のまとめではなくあくまで感想と勉強メモという扱いとしました。 もし本書の要約を知りたい方は(そうじゃない方も)、まずこちら↓を見てみることをオススメします。 著者自らによる解説です。
こちらも必見。
もし興味がわいたなら、ぜひ『サピエンス全史』を読んでみることをオススメします。
さて、これまで駄文にお付き合い頂きありがとうございました。 自分で勝手に始めた短期連載ながら、ここまで大変だとは予想してませんでした。 週刊連載を仕事にしてる人とか本当に頭が下がります。一緒にすんなって感じでしょうけど。
書き始めたきっかけがIT革命だったんですが、今回ほとんど触れられなかったので、そこは今後じっくり。 ただ、あんまり革命と言い続けて共産主義者と思われても困るので(違いますよ)、書き方は考えます。 やはりテクノロジーを軸に置くのがいいのかなー。でも太宰とかにも触れたいなー
次回から通常運営。今後もちょいちょい「虚構」が出てくると思いますが、どうぞよろしく。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/16
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