木牛流馬は動かない

テクノロジーや気付きによる日常生活のアップデートに焦点をあて、個人と世界が変わる瞬間に何が起きるのかを見極めるブログ。テーマは人類史、芸術文化、便利ツール、育児記録、書評など。

木牛流馬は動かない

書評『伝える仕事。 - ほぼ日刊イトイ新聞』

「伝える」ことがテーマの対談を読みました。 対談評というほどでもないので、「感じたこと」のメモです。

対談について

ジャパネットたかたの創業者である髙田明さんと、 糸井重里が対談することになりました。 生まれた年も日も近いふたりが、 「ものを売ること」「伝えること」について、 それぞれの考えを語り合います。 自分の売りになることは何か?  アイデアを出すにはどうすればいいのか? 失敗を乗り越えるには? 決して「うまいことを言わない」、 ベーシックでぶれないヒントに満ちた全10回です。

私の仕事は技術職なのですが、常々小難しい技術を分かりやすく伝えたいと苦心しています。

高田社長はもちろんTVでしか知りませんでしたので、惚けたふりをして口がうまい人かと思っていました(失礼)。 対談を読んでみて、その裏にある深い哲学に感嘆することが多く、いい刺激をもらえる対談でした。

私の心の琴線のどこかに触れた言葉

高田
大学生の頃のことですが、 友人と大阪駅で待ち合わせをしました。 ところが彼は1時間経っても来ません。 当時は家の固定電話に、 公衆電話から連絡するしかありませんでした。 電話したら「いま風呂入ってる」と彼は言いました。 「俺は1時間待って、お前が風呂入ってるって、 じゃあここから俺はどうするんだよ」 と電話口で言いましたが、 でも、それ自体がすごい思い出なんです。
糸井
ああ、わかります。
髙田
いまはLINEで解決できることです。 しかし、思い出が残らない。 思い出だけではなく、 進化した道具は、人間の本質的な何かを 奪うのかもしれません。 こういうことを言うとみなさんは、 「じゃあなんでジャパネットはスマホ売ってるんだ」 とおっしゃいます。「これは、必ず、この問題を 解決しなければいけないときが、世界に来ます」 と、ぼくは言うんです。 便利さを追い求めていくと、 問題にぶつかる日が来ます。 そこで「ここは変えなきゃいけないな」という、 知恵を出してきた歴史が、人間にはあります。 「それが来るから、それまではスマホ売ります」 と言っています。
糸井
そうですね(笑)。

第5回 選び直せる時代。

LINE時代の思い出の作り方もあると思いますが、まぁそれは置いといて。

ざっくりまとめると、近年のテクノロジーの進化スピードが速すぎて、人間の進化が追いついていないということですね。そして、このいつか来る「問題」を解決したときこそ、人類がそのテクノロジーに追いついた瞬間になります。

たとえば、インターネット(P2P)による情報のやりとりをよりセキュアかつ高速にするために、暗号技術が進化し、Winnyという「問題」にぶち当たり、ブロックチェーンが登場する、といった流れは記憶に新しいところ、というか現在進行中。

それにしても高田さんの、歴史から営業に戻る頭の切替えの速さよ。

糸井
放っておけば、ふだんって、つまらないものなんです。

第3回 夢がないよ。

自分を放っておかない、ってことかな。おもしろく生きたいですね。 私は「やりたいことリスト100」を作ってますが、これは夢が広がってオススメ。

高田 ぼくの信念であり、いちばん好きな言葉は、 「いまを生きる」です。 いまの瞬間を精一杯生きることで、 ここまでやってきました。 そうしたら、ここにきてなぜか、 あと50年ほど生きられるような気がしてきました。

第4回 おもしろかったな。

この対談の対象年齢は私よりも少し高いようで、50歳が感じることのくだりは私には理解できませんでした。この引用文も「まぁそうなんだろうな」という感じ。

高田
「お客さんがこの商品どう思うか」を感じながら、「いいでしょう」という言葉を出していかないと、ものは売れないです。

第七回 思う。

「感じる」ためには、インプットとなる情報に対して、前提知識を揃えないといけません。同じ時を過ごし、同じ釜の飯を食えば、自然と互いの思考は近づきますが、ここでは赤の他人を相手にどんな情報が必要か、で考えてみます。

モノを売るなら、まずはこの商品がなぜ生まれたのかというスタート地点に、客に立ってもらう必要があります。 こんな商品があればこんな嬉しいことがある。この機能であんな不便だったことが解消できる。

前提条件を揃えるためには、客の頭の中にない知識を入れて理解してもらう必要があります。 提示する情報の取捨選択と「感じてほしい」ことの切り分けが難しいな、と思いますが、そこが営業職の腕の見せ所なのでしょう。

ブログでも、なるべく最小限の前提知識を提示したうえで、自分の「感じた」ことを書くことが求められますね。意識してるつもりではあります、これでも。

高田
作る人たちの考えていることをそのまま出せば、価値は数倍に上がるんじゃないかと思います。

第9回 企業のオリジナリティ。

「良いものさえ作れば売れる」という時代が終わった件。

高田
文字を残すというのは、人生残すことだから。

第9回 企業のオリジナリティ。

言語化が最近の私のテーマなので、どんどん残していきたいと思います。もちろん公開するかどうかは別の話。

糸井
ぼくはいつか、中年のオヤジ同士で ディズニーランドに行って、 「スマホを使わないで、会えたら会う」 という一日をすごしてみたいと思っています。

私もやりたいことリストに追加しておきました。ディズニーじゃなくてもいいけど。

つらつらと「感じた」こと

ちょうど今朝のニュースで以下のようなものがありました。

ニュースの内容には踏み込みませんが、ここで私が引っかかったのが、産経(私が観たのはめざましテレビ)の記事の、失言に対する態度。

野党側から軽率だと批判を浴びそうだ。

政治家が失言したのだからそりゃあ多少は浴びるでしょうが、その前にあなた達はマスコミだろう、と。批判されるべき失言だと思うなら、まず報道機関が先駆けて批判して然るべき立場なのでは、と。

というのが私が「感じた」こと。 (別に産経を下げNHKを上げる気もありません)

さて、これが何なのかというと、ここに本対談『伝える仕事。』が価値を生むための前提条件、つまり日本社会のもつ問題点が見え隠れしているように思えます。 本対談をしっかり「感じる」ために、すこし考えてみましょう。

なぜ対談のお二方がこの対談をしたか?なにを読者に伝えたいと思ったか?と考えたときに、やはり以下の言葉に集約されるのではないかと考えます。

「感じる、思う、考える、行動する。」

「伝える」ことをテーマにしていながら、そのために最も重要なことを個人作業の最たる「感じる」ことに置いているわけです。

あらためて考えてみると「感じる」って結構難しくて、言い換えると、自分で良し悪しを判断する、ということになります。 しかもこの引用文に従うなら、自分が「感じた」ものをどう捉え(思い)、どう論理を組み立て(考え)、そしてどう伝える(行動する)か。これを全て区別しなければならないわけです。

難しいことではありますが、できないことはないはず。これから逃げてしまうと、前提知識を揃えるどころか、「バズる」かどうか、炎上しないかどうか、だけが判断基準になりかねません。

「周りに流されずに、自分でちゃんと感じられてますか?」というメッセージがこの対談に込められている、と私は「感じ」ました。

対談の中では、同じことを別の表現でも言及してます。

糸井
「1位だったら間違いないだろう」と、みんなが1位を買うようになりました。2位は売れないんです。

第2回 素が出すこと。

誰かが良いと言ってたから買う。TV番組のランキングコーナーか、あるいはAmazon価格.comあたりでどこの誰が書いたかわからないレビューを読んで決める。 私も高額でないものなら、よくやってしまいます。 しかし、もし伝えることを仕事にしているなら尚更、自分で商品価値を判断することが求められるというメッセージです。

そうは言っても、みんな「良い」と思ったから買っているのも事実。実際、売れているモノは良いものも多いです。逆に信頼できる人が勧めるものなら何でもいいかというと、当然そんなこともない。この辺のバランスは難しいですね。

この界隈で奮闘しているなんて、営業職の皆さんには頭が下がる思いです。

雑記

たとえば、本を途中まで読んで感じることと、その本を全て読み終わってから感じること、もう一度読み返してみて同じ箇所で感じること。

これらは全て違うものになると思います。少なくとも私は、たいてい違いますし、これがあるから、私は何度も同じ本を読み返したい派です。

本当はどれも記録しておいて大事にしたい感情ですが(実際は時間的にやってられないことも多いです)が、人様に公開するかどうかとなると、やはりその先の「考える」「行動する」まで思考を進めることが必要。

Twitterではだいぶ垂れ流しですが、このブログでは、なるべく「感じた」ことを軸に「考えて」書いていこうと思っています。

(2017/09/05追記)

おしまい。

www.1101.com

(この記事の執筆所要時間: 3h)