革命の歴史をざっと振り返る
最近の世界情勢の変化が激しいことと、自分があまりに歴史を知らなすぎることにヤバみを感じ、自分なりに歴史をまとめてみることにしました。
重要な変化点である革命にフォーカスして、特にテクノロジーが社会に与える影響を見ていきたいと思います。 ソースは主にWikipediaとGoogle先生。 今回は本当にざっと流すだけなので、詳細には踏み込みません。
革命とは
なぜ革命にフォーカスしたかというと、2013年頃からずっと「IT革命って結局何が変わったの?」を考えていたためです。 きっかけはこれ。
革命の定義は、ちきりん氏によるとこうなります。
「権力の交代が起こった場合」のみ革命と呼んでいるように思えました。 今までの支配者層が没落し、それまで抑圧されていた層が権力を握る。支配者層と非支配者層のふたつの層が逆転したから革命と呼ばれるのです。
なるほど、たしかに。 それならば、前支配者(革命される側・敗者)と後支配者(革命する側・勝者)を見ていけばいいかな。
これを前提に、いくつか革命の歴史を辿ってみたいと思います。
こういう話はちゃんとまとまった書籍や論文が多くあると思いますが、それらはあえて読まずに、表面的に得られる情報のみから、自分で考えてみたいと思います。 そのため、正確性はだいぶ怪しいです。あしからず。
2017/4/18追記: 本エントリー執筆時点では『サピエンス全史』は未読です。
目次
- 革命とは
- 目次
- ホモサピエンスの出現
- 新石器革命/定住革命/食糧生産革命
- ルネサンス
- 17世紀科学革命
- 産業革命
- PC革命
- インターネット革命
- RNG革命
- シンギュラリティ
- Human 3.0
- まとめ
- 参考文献
ホモサピエンスの出現
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | 約10万年前 |
背景 | ? |
旧支配者(敗者) | ネアンデルタール人 |
新支配者(勝者) | ホモ・サピエンス |
きっかけ | 異常気象、またはそれによる飢餓 |
キーテクノロジー | 旧石器、壁画 |
革命後の世界 | 住みよい地域を探して大陸を大移動。 |
考察/コメント
初っ端から革命ではありませんが、現生人類の始まりということで。
最新の研究では、ネアンデルタール人は当時既に石器や火を使っており、しかもホモ・サピエンスと混血していたようです。 「ネアンデルタール人が絶滅して、ホモ・サピエンスが生き残った」と聞くと、彼らの対立の結果、ホモ・サピエンスが勝利したような印象を持ちますが(少なくとも私はそうでした)、どうやら実情はそうでもなさそうです。
ネアンデルタール人が絶命したのは、彼らが多く生息していたヨーロッパで大噴火があったため、というのが有力説みたいですね(諸説あり)。 ホモ・サピエンスはアフリカやアジアに多く住んでいたので生き延びただけという説。
ホモ・サピエンスが現在生き残っているのは、「他者と共感して社会を形成する」能力のおかげともいわれる。同時にそれは、共感する集団以外を排除する区別(わけへだて)を生み出すことにもつながっていく。
(スクール・ナーランダ)
このような説もありますが、混血していたならば、この点において両者に違いはなく、たまたま(大噴火による)人口の絶対数の差だけのことなのかもしれません。
今回は省きますが、6万5千年前の出アフリカもかなりアグレッシブなイベント。
新石器革命/定住革命/食糧生産革命
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | 約1万年前~2千年前 |
背景 | 各地で文明が発達して、人々が定住するようになる。 |
旧支配者(敗者) | 狩猟・採集が得意な人々 |
新支配者(勝者) | 農耕・牧畜が得意な人々 |
きっかけ | まずシュメールで農耕が始まります。それがメソポタミア文明を経由してヨーロッパへ伝播し、広く普及するようになります。これが新石器革命の始まり。 |
キーテクノロジー | 農耕、牧畜、楔形文字 |
革命後の世界 | 富の形成と文明が始まる。 |
考察/コメント
個人的には、ここかなりデカい革命だと思います。なぜかというと、こういうことです。
それまでの狩猟採集民は、純粋に身体能力が高い人々でした。
しかし、農耕・牧畜が始まると、地域社会的にはその指導指揮ができる人が重要視されるようになります。
それは、食糧を長期的に安定供給することが必要で、それを実現できる人(そのような作業の指揮ができる人(と言い換えられます))は、彼らが地域社会の主導権を握るようになります。
食糧を巡って小競り合いも多かったと予想できます。 戦があるので、まだまだ筋力も重要ではありますが、上に立つ人はやはり知識を持つ人。 単純に知識というよりは宗教的・血統的な理由も大きそうですが、人類全体としてはここに社会的地位(格差)が生まれました。
ここから次第に、交易や専門技術、市場もできるようになっていきます。
ルネサンス
従来の一般的な見方は次のようなものである。およそ1000年の間の純粋キリスト教支配のもと、西ヨーロッパ圏では古代ローマ・ギリシア文化の破壊が行われ、多様性を失うことにより、世界に貢献するような文化的展開をすることはできなかった。 (Wikipedia)
ルネサンスの三大発明といえば、火薬、羅針盤、活版印刷。中国ではさらに造紙術を加えて四大発明と呼ぶこともあるようです。 ここでは「情報」の観点から、活版印刷に注目してみます。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.14世紀 |
背景 | 文字の発明は、B.C.3世紀頃のメソポタミア(諸説あり)。文字を扱えるような知識を持つ人の地位向上があったと思われる。知識層には、教育の重要性も認識され始めたはず。 |
旧支配者(敗者) | 「原本」を筆記していた人々 |
新支配者(勝者) | 印刷に関する技術と権益を持つ人 |
きっかけ | 経典の大量頒布のため。例えば、それまで日本の僧侶が中国に修行に行く目的の大半は(遣唐使とか)、経典の写経であった。 |
キーテクノロジー | 活版印刷(グーテンベルグ)、紙 |
革命後の世界 | 筆記にかかる時間が大幅に短縮された。 |
考察/コメント
印刷のためには機器と技術と金が必要。つまりコストが半端ない。 そのような苦労をしてまで印刷をしたい(頒布したい情報を持つ)かつ、それが出来るのは誰かといえば、時の権力者、政治家、宗教関係者あたりでしょう。 つまり、ばらまく印刷物(広く流通する情報)の内容はごく限られた人間が制御できたことになります。
と、ここまで書いていて気付いたのですが、これは革命ではありませんね。
活版印刷によって印刷技術を持つ人の地位が上がっても、既得権益者をひっくり返すようなものではなさそう。
また、「原本」を持つ人の権威は変わっていません。広く頒布出来るようになった分、むしろ増大したのかも。
革命認定、却下。
そういえば誰もこれを革命とは言っていないな…ごめん、ルネサンス。
個人的には、この時代のヨーロッパとイスラムの文化の交わりも興味あるところですが、それはまたの機会に。
17世紀科学革命
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.17世紀 |
背景 | 経験知による、いわば机上の理想論が重要視されており、実験による現象確認は行われていなかった(軽視されていた)。理論と異なる現象は誤差と見做された。理想論は宗教との結び付きが強く、教会の権力強化に資していた。 |
旧支配者(敗者) | 一部の人間のみに都合のよい話(科学的に証明されるとマズいこと)を流布していた人々 |
新支配者(勝者) | 科学者、論理的な証明ができる人々 |
きっかけ | ガリレオ、ケプラー、コペルニクス、ニュートン |
キーテクノロジー | 論理、実験、地動説 |
革命後の世界 | 理論と実験による再現可能な方法論、近代科学の基礎となる考え方が生まれた。 |
考察/コメント
誰にでも再現・証明が可能ということは、それまでの権力者が正としていた情報(天と地を二分するキリスト教的価値観 )が、科学者たちによってその「嘘」が暴かれていくことを意味します。 しかし、まだまだ既得権益層の力が強く、(論理で)権力をひっくり返すには届きません。 ガリレオの宗教裁判が好例ですが、一般人の教育レベルがまだまだ低い。識字率なんて良くて10%くらいです。
この時に科学の種は播かれましたが、機は熟しておらず、学術的にはともかく社会的な影響力はそこまで大きくなりませんでした。 おそらくですが、このため「科学革命」なんてヌルい名前になったんじゃないかと予想してます。こういうのって誰が命名するんでしょうね?
この時代で個人的に一番スゴイと思う業績は、ルドルフ表です。
産業革命
18世紀科学革命とも呼ぶようです。 次々と新しいテクノロジーが生まれます。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | 1760s-1830s(第1次)、1865-1900(第2次) |
背景 | 工業製品は農家がそれぞれ手作り。問屋制手工業→工場制手工業→工場制機械工業 |
旧支配者(敗者) | 中小規模の農家 |
新支配者(勝者) | 資産家、起業家 |
きっかけ | 期間が長すぎて不明 |
キーテクノロジー | 綿織物、蒸気機関、電気、化学、石油、製鉄、モーターなど多数 |
革命後の世界 | それぞれの農家が個別に生産していた製品を、工場で大規模生産するようになる(これはまだ工場制手工業)。 産業革命では、これが機械による自動化へシフトした。同時に資本主義化も始まり、一時的には失業者が増えるなどの社会問題もおきた。 |
考察/コメント
対象範囲が広すぎて、まったく調べきれていないのですが、もう技術の発展を追いかけるだけで楽しい時代ですね。 ここは科学技術というより経済(生産)活動と社会のあり方が大きく変わった革命です。 これが進歩かどうかはわかりませんが、技術的には、自動化がようやく本格化してきた感じですね。 副産物的には、管理、開発、製造、事務といった職業上の役割分担が生まれます。 それまでも分業制はありましたが(スイスの時計製造など有名)、工場制工業が発達したことで、それぞれの分野の(職業としての)専門家が生まれ、技術進歩も促進されました。
かつてワットが発明した蒸気機関は、農村の田畑を耕す牛馬の仕事を代替しました。その結果、現在の先進国における農業人口の割合は2%前後です。悪い言い方をすれば残りの大多数の98%は農村を追い出されて別の仕事をしなければならなくなったわけです。 コンピューターの革新 新たな価値創造が必要に/斉藤ウィリアム浩幸
ちなみにこの頃フランス革命が勃発します。
第2次産業革命では、重工業が発展します。 これに伴う大きな変化としては、人間が移動するためのテクノロジーが発展したことがあります。 また、印刷機と紙の進歩もあり、印刷が普及します。 ここまでくれば、コンピューターの登場は時間の問題です。というか、初期の電子計算機は産業革命の延長にあると理解しています。
PC革命
いよいよIT革命。第1弾は個人用コンピューター(PC)の登場による、デジタル革命です。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.1975-1995 |
背景 | 電子計算機は非常に大きく高価で、大学や軍といった限られた場所にしか存在しえなかった。最初は機械式やアナログのコンピューター。バイポーラトランジスタの登場(1948)とにより、デジタル関連、コンピューター関連のテクノロジーが爆発的進化を遂げる。 |
旧支配者(敗者) | デジタル技術とコンピューター技術を駆使して、マーケット感覚に従い、価値ある情報を生み出せる人 |
新支配者(勝者) | 旧来の資源(土地や物資)のみに頼る人 |
きっかけ | Altair8800, Apple I, Apple II |
キーテクノロジー | A/D変換、半導体、コンピュータサイエンス、ソフトウェア |
革命後の世界 | 高速計算により1つの作業にかかる工数(必要な人月)が激減した。個人で勉強すればIT関連技術の習得が可能。ハッカー文化の影響もあり、IT関連の知識やノウハウの共有が進んだ。一般的には、個人が文章作成・編集や事務作業を簡単に行えるようになった。HDDが許す限り無限に情報の保存が可能になった。 |
考察/コメント
それまでも機械化のテクノロジーは多くありましたが、それらは全て工業や農業といったブルーカラー的な作業のためのものでした。 PC革命では、現実の物体は動きませんが、ホワイトカラー的な仕事の取扱い方が変わりました。
私は、パーソナルコンピューター革命の最大の変化は、「知識労働の自動化」を個人が手にいれたことだと考えています。具体的には、情報の「コピー」と「比較」の高速・大量処理。 コピーは概念的に近い技術として活版印刷が存在しましたが、コンピューターはさらに比較の機能を備えることで、(大量の)データの入出力・編集・記録といった基本機能を活かすことができるようになりました。そして、この2つの基本機能を使って「データの変換」を行うのが、ソフトウェアの仕事になります。
ちなみに、現在のPCは、処理が高速化・大容量化しただけで本質的にはこの時代のものから変わっていない理解です。
ライプニッツは「立派な人間が労働者のように計算などという誰でもできることに時間をとられるのは無駄だ。機械が使えたら誰か他の者にやらせるのに」と言ったという[14]。ライプニッツは二進法の提唱者でもあり[15]、今日のコンピュータは全て二進法に基づいて動作している。 計算機の歴史 - Wikipedia
さて、これによってコンピューターを知識労働に応用することができるようになります。 もう大人数で何日もかけて書類の複製を作る必要はなくなりました。ただ書類を運ぶだけの仕事も、紙で保存していた記録も(コンプライアンス的な制限はともかく)不要になりました。
個人が簡単に大量の情報を取り扱えるようになること。
これは、個人で情報を生み出すことが出来る人、そして、マーケット感覚を持つ人が、力を持つことにつながります。それは(デジタル)データに限らず、Webサイトの文章やソフトウェアも含みます。
その例が、IBMであり、microsoftであり、Linus Torvaldsであるわけです。日本は完全にこの分野で遅れを取りました。
ボトムアップから標準化が行われる、デファクトスタンダードも重要な概念ですね。 これも技術を持つ人が先導することの好例。
インターネット革命
IT革命第2弾。別名モバイル革命。 世界中のPCがインターネットに繫がります。
「インター」とは「間」という意味。インターネットとは、小規模ネットワーク同士をつなぐ大規模ネットワークのことです。だから、インターネットは1つとは限りません。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.1995-2015 |
背景 | 部品の性能向上、価格下落によりコンピューターの数が爆発的に増える。パソコン通信から始まり、各地でネットワークが形成され、インターネットへ発展する。 |
旧支配者(敗者) | 万人向けの情報・サービスを提供する人々 |
新支配者(勝者) | インターネットの大海からマーケットを見つけ出し、そこで価値ある情報・サービスを生み出せる人々。または、そのようなプラットフォームを提供できる人々。 あるいは、そのようなビジネスを展開し続けられること。 |
きっかけ | ARPANET |
キーテクノロジー | World Wide Web、パケット交換、ハイパーリンク、スマートフォン、UI/UX |
革命後の世界 | インターネットが通信インフラかつ人々の外部脳(≒データベース兼サーバー)として普及する。普遍的な(万人向けの)情報は、Wikipedia等の知識共有サービスにて誰でもアクセス可能になる。また、個人用デジタルデバイスが、PCからモバイルへ移行する。スマートフォンとインターネットにより、情報へのアクセスに場所を限定する必要がなくなった。 |
やはり2000年を境に文明レベルが違う気がする pic.twitter.com/tpAO3Tkd7u
— ゆるふわ怪電波☆埼玉 (@yuruhuwa_kdenpa) 2016年12月8日
考察/コメント
インターネットそのものはツールというかプラットフォームなので、IT革命の本質ではないと考えます。 ここでの本質は、情報に対する価値が変わったこと。 場所を固定する必要がなくなり、24時間いつでもアクセスでき、そして内容によって価値の格差が生まれたこと。 これが本質だと思います。
その本質は、情報の分流にありました。膨大な情報を分流させて扱いやすくすること。それはアプリレベルでの分流でもいいですし、MacとiPhoneのあいだでもいいですし、席についている時と歩いている時、忙しい時と楽な時といった時間の活性度に対する分流のどれでも同じでした。 Mac・PCですべての作業を行わなくてよい。席についている時間だけが情報整理という意味で活性化するのではなく、これからはすべての場所で適宜情報を引き出して活用できる。 堀 E.正岳 / Lifehacking Newsletter 2016 #37
[コラム]情報革命と情報技術革命の違い
ようやく現代まで追いついたので、閑話休題。
情報革命は、比較的広義である理解です。土地や資源を持つよりも、有益な情報を持つ人が生き延びる世界。 イメージ的には、徐庶が登場して寡軍ながら荊州界隈で魏軍にチート的勝利を収める感じ。ここでの有益な情報とは、孫子や六韜といった、論理的な兵法。抽象度の高い情報と言い換えてもいいでしょう。 世間的に情報に対する価値がまだまだ認められていない場合、このような有益な情報を持つ人ならば、ほぼ無敵状態です。 私は、これが「情報革命」だと理解しています。
一方の情報技術(IT)革命では、情報とデジタル技術を上手く組み合わせることが勝つための必要条件になります。どちらか片方だけではダメで、デジタル技術を駆使して、情報を蓄積、整理、ブラッシュアップ、そして適切なタイミングで適切な人に提供できること。マーケット感覚が大事。
とはいえ、デジタル技術やコンピューター技術は重要なテクノロジーではありますが、あくまで手段。革命の本質ではありません。
重要なのは、情報の内容。
インターネットの普及により、万人向けの情報の価値(価格)は、既にゼロまで下がりました。
一方、スマートフォンの発展によりデジタルデバイスがパーソナル化したことで、これをきっかけに「ライブ感」をもつ情報の価値が上昇していきました。カメラの小型化・高画質化も大きなファクターです。
そもそもスマートフォンの本質は、個人の手元に「共有」機能をもたせたことにあると私は考えています。
逆説的ですが、IT革命直後の現代は、リアルな情報や体験といったインターネットで共有できないことに対して、人々は価値を見出しています。「プロダクト(製品)よりもコンテキスト(文脈)」とはよく言われることですが、一般ユーザーは大企業から「与えられた」製品さえ持てば満足するのではなく、それをどう使うかが(マーケティング的に)重要になりました。
例を挙げると、音楽ライブ、「やってみた」動画、アニメの聖地巡礼、南の島が観光地化、などなどキリがない。昨年末の「恋ダンス」も、ただ観るだけだったはずのドラマに「体験」を盛り込んで視聴者を巻き込んだ(そう感じさえすれば実際に踊らなくてもよい)鋭い戦略です。
インターネット黎明期に始まり未だに現役で残っている2ちゃんねるやTwitterを思い返すまでもなく、無名な一般人からのボトムアップが、バーチャル/リアルともに一般人の情報の取扱い方に変革を起こした、IT革命の本質であると私は理解しています。
蛇足
基本的に↑のように考えていますが、じゃあ「誰にでもアクセスできる情報」に価値がないのかといわれれば、必ずしもそうではないんですよね。
この点で最も悩ましいのが、ほぼ日刊イトイ新聞。
サイト自体は誰でもアクセスできるのですが、刺激的かつ面白い記事に溢れています。
これは一体なんなのか?
おそらくですが、記事を作るときに記事そのものではなくその先に生まれる思考(人によって千差万別=「パーソナル化」と「ライブ感」)に価値を置いているからなのかな?と解釈していますが、まだ答えはでません。
RNG革命
さて、ここからは未来の話になります。 既に2017年。未来は始まっていますよ!
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.2016-2035 |
背景 | IT革命に始まる大企業の時代から、インターネットによる個人の時代へ |
旧支配者(敗者) | IT技術に乗り遅れた人 |
新支配者(勝者) | 新しい技術を取り入れて「人間」のためのサービスやプロダクトを生み出す人 |
きっかけ | ムーアの法則、IT業界の飽和、 |
キーテクノロジー | ロボティクス、IoT、ナノテクノロジー、遺伝子工学 |
革命後の世界 | ↓ |
まずは消費社会から生産社会への進化が起こります。 social-design-net.com インターネットや仮想空間だけをベースにしたテクノロジーはあくまでバーチャルなものであり、アートやメディア作品はともかく、技術的にはすでに限界に近づいています。あくまで現実世界に即したものが求められるようになり、IoTを先頭にハードウェア(とソフトウェアの連携)の価値が見直されています。
そして、2016年から2035年まで20年かけて3つの革命があると言われているんですね。それはRNGと言われていて、ロボティクス、ナノテクノロジー、そして遺伝子工学なんですよ。このRNGを分子として、分母はAIです。これが20年かけてものすごく変わるんですよ。 ja.catalyst.red
ロボティクス(Robotics)
デジタル技術の進化形。 ソフトウェアが「デスクトップ」から飛び出し、現実世界に対して物理的なアプローチを行います。 代表的なプロダクトは、ドローンや自動運転。VR/ARなんかもありますね。 ドローンの応用例については以下を参照。 hiah.minibird.jp magic.microad.co.jphttps://magic.microad.co.jp/skymagic/movies ドローンは今でこそ人が操縦していますが、そのうち自動運転化するのは明らかでしょう。 物流や軍事利用だけでなくエンターテイメントへの応用もとても楽しみです。
ナノテクノロジー(Nano-technology)
化学というか素材ですかね。ロボティクスや医療への応用もあるようですが、 正直よく知りません。これでも観といて。 go.ted.com George Tulevski: The next step in nanotechnology
遺伝子工学(Generitics)
ヒトゲノムの活用より人間の体質や病気を操作することが可能になります。 寿命がこれまで以上に延びるかもしれませんし、あるいは、人が死ななくなるかもしれません。 wired.jp
考察/コメント
RNG革命の最大の変革は、あらゆるテクノロジーの実行が人間の手を離れることです。 これまでのPCもスマートフォンも、あくまで人が操作するものでした。 しかしこれからは、ソフトウェアを頭脳に、RNGそれぞれを手足とした、新しい「労働者」の時代になります。
私の個人的なイメージは、式神を従える陰陽師ですね。あるいは、現代の魔法使いも出現しています。 そんな時代では、「魔法をかける側」であり続けることが生き延びる条件になります。 さらっとプロトタイプを作ってしまったり、なんだかんだ言って実際にモノをつくる人々が重要視される時代になっていきます。これは昔からそうなのかもしれませんが。
シンギュラリティ
そしてAIの時代へ。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.2030-2045? |
背景 | テクノロジーで制御できるものは、どんどん自動化されていく |
旧支配者(敗者) | 旧人類 |
新支配者(勝者) | AIを使いこなす人、AIを生み出す人 |
きっかけ | 人工知能(AI)の性能が上がり、人類の知能を上回ること。 |
キーテクノロジー | 機械学習、Deep Learning、ビッグデータ |
革命後の世界 |
考察/コメント
AIは、テクノロジーを自分で生み出せるようになると考えられており、つまりAIが自分で機能の追加・改善(つまり成長)していくことができる。AIの進化の速度は凄まじく、ある時点でその性能は人間を超える。この変化点はシンギュラリティと呼ばれており、レイ・カールワイツによると2045年までに起こると言われています(諸説あり)。こうなると、その先にAIがどう成長していくのか、もはや人間にはわかりません。
ここからはただの妄想なのですが、果たして、AIがコンピュータの中に収まっているかも怪しいものです。 なぜなら、すでに3Dプリンターが登場したので、AIが自身のハードウェア設計を行うことも可能になったからです。 実際に始めた例があるかは知りません。でも時間の問題でしょう。
もしAIがAI自身を載せる基盤とボディを3Dプリンターとかで設計・製造し始めたら、それはもはや新しい生物なんじゃないの?
— 砂肝うま太郎 (@sngm45) 2016年12月5日
AI自身が自分のハードウェアを設計し、搭載されたマイコンにソフトウェアを書き込む。 これを全てAIが独立してできるようになれば、それはもはや新たな生物と言えるかもしれません。
あるいは、AIが「ハードウェアなんていらないよ」という判断を下すのかもしれません。
人工知能が、人間を不要と思い、人間を滅ぼす
— オカルトたん (@witchcraft_tan) 2017年1月23日
ではなく
人類知能が、反乱を起こし、人間は奴隷となる
でもなく
人類知能が、自分の複製を作るために、多くの資材を用いて世界中に工場を作り、効率化を測り人体の影響を考えずに作業を進めるため、人類は多くの化学製品に身体を侵され死ぬ
が私の論
Human 3.0
ここまでが通常言われているシンギュラリティ。
人間にとって良いことなのか悪いことなのかすら現時点では分かりませんが、人間を取り巻くテクノロジーとその付き合い方が今と大きく変わることは確実なようです。
さてそれでは人類はどうなるか。
概要
項目 | 内容 |
---|---|
時代 | A.D.2030-2045? |
背景 | テクノロジーで制御できるものは、どんどん自動化されていく |
旧支配者(敗者) | Human 2.0 |
新支配者(勝者) | Human 3.0 |
きっかけ | シンギュラリティ |
キーテクノロジー | 人類の種としての生存本能 |
革命後の世界 | ?? |
人間の仕事がなくなることはなさそうですが、たいていの作業はAIやコンピュータがうまいことやってくれるようになります。
https://twitter.com/bishop_ring/status/809720686629371904
ロボットやAIに奪われるのは雇用ではない、業務である。無職になるのではない、仕事が変わるのだ
— 蛯原 健 Takeshi Ebihara (@TakeshiEbihara) 2017年2月1日
変われない人は苦労する。順応する人は楽になる
給料が下がる人は出る。上がる人も出る。差し引きプラスとなる
とマッキンゼーは言ってますhttps://t.co/MubsiUriOO
すると、人間の興味は「内側」、つまり自分自身の心身に向かいます。 生身の肉体と精神による「経験」は、AIでは得ることができないものだからです。 これを駆使して行うような仕事が「人間の仕事」として残る、と言われています。
「内側」とは、具体的には、ヨガや気功、瞑想、アーユルヴェーダ、マクロビオティックといった、民間医療やスピリチュアルに近いテクノロジー。食事なんかも関係してきそうです。 今はまだ一部の人しか興味を示していませんが、これらのテクノロジー(メソッド?)が現在よりも発展していくと考えられます。
ここで、WHOの健康の定義を見てみましょう。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
(日本WHO協会訳)
ここで重要なのは、肉体だけの健康ではないということ。
精神的に、社会的に、健康であること。
現代の日本社会にとって全く欠けている視点ですね。
筋トレだけまたは勉強だけしててもダメで、メンタルとフィジカル両方を相互に鍛えていくことが求められるようになるわけです。
ブッダも似たようなことを言っていたと記憶していますが、個人的には仏教(ブッダ本来の教え)の価値が見直されていくと考えています。
さらにさらに。
高城剛氏によれば、ここから人類は生物としての更なる進化を始めます。
この10年間の情報量って、それまでの人類史のすべてより大きいから、そのなかで生きる人たちは、気がつくと進化をはじめてる。だから、生き方とかではなく、脳の構造そのものが変わってきている人が、最近増えてきているんだと思います。
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2016年12月8日
もはや経済問題でも少子化でも戦争でもなく、人類は絶滅危惧にひたすら向かっています。それも急速に。ですが、人類は生き延びねばなりません。そのために必要なことは、たったひとつ。今、平和ボケした人類は10万年ぶりの「進化」の過程に差し掛かっており、「進化」した者のみが生き残るのです。
— 高城剛 (@takashiro_bot_) 2016年12月8日
つまり、シンギュラリティ以降のAIに取って代わられる今の人類「Human 2.0」がいる一方で、そこから人類が種として生き残るために別の「機能」を持った新しい人類が登場する。そしてその新しい人類は「Human 3.0」と呼ばれています。 前述の「生身の経験」がAI/VR/AR等により与えられるものである可能性もありますが、そのような人々は「Human 2.0」です。
では、その新しい人類はどこへ向かうのか?
昭和生まれの我々(私)は生き延びられるのか?
そもそも地球にいつまで住んでいるのか?
そのまた次の革命は、何が何をどうひっくり返すのか?
現時点ではイメージしかできないのですが、それをより具体的にイメージ出来る人々が未来を作っていくのかな、と思います。 1人の人間としても、エンジニアとしても、楽しみでもあり、恐ろしくもある、といったところです。
まとめ
ざっと革命の歴史を見てきて、ある程度共通して見えてきたことがあります。
ざっくり大きな流れとしては、現行の仕組みで行き詰まって混乱してきたところで、有象無象の一般市民からボトムアップ的にイノベーションが生まれる、というカタチ。
そして、マーケット感覚をフルに発揮した人が、持てる技術と資源をそこに投入する。
そこでようやく、変化の兆しが生まれるようです。
技術が社会へ及ぼす影響の経緯をもう少しリアルかつコンパクトにまとめたかったのですが、力及ばす。
記事を書く前の予想として、先の革命の勝者が次の革命の敗者なのかな、と安易に考えていたこともあり、分析が若干その方向に縛られてしまった感はあります。
歴史を学ぶことの重要性をひしひしと感じました。誰かこんな感じの小説かマンガ書いてくれないかな。
この先どうなるのか、自分に何ができるのか、考えていく必要がありますね。
予想以上に随分長くなってしまいました。 ここまで読んでくれた稀有な方、ありがとうございました。
このエントリを書き上げるまで読まないと決めていた『サピエンス全史』をようやく読み始められます。 (いつになるか分からないけど)そのうちアップデートしたい。
参考文献
ジェノグラフィック・プロジェクト
DNAから人類の共通祖先を辿っていき、地図をつくっていこうという素敵プロジェクト。 ja.m.wikipedia.org
人類の進化 - Wikipedia
みずほ情報総研 / -超長期的な視点からの考察- IT革命とは?
IT革命の基本的事柄を押さえた小論文。いい意味で教科書的に網羅しています。 www.mizuho-ir.co.jphttps://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2001/rp0108.html
IT革命とはなにか
コスト視点からIT革命を詳細に分析されています。実務レベルまで考慮したことが素晴らしいです。 www.pref.toyama.jp
五度目の「関ヶ原」
日本に焦点をあてた近代の大変革を振り返る記事。人口比や生存戦略にまで触れ、非常によくまとまっています。 okite.hatenadiary.jp
モジュール化
www.rieti.go.jphttp://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/10072101.html
うめ『スティーブズ』
- メディア:
- この商品を含むブログを見る
音楽がもたらしたコンピューターの発明 - TED Talks
Steven Johnson氏がコンピューターの歴史を新しい視点で振り返る。 この考え方は本当に素晴らしいと思います。 www.ted.com
高城未来研究所メールマガジン『Future Report』
takashiro.com ノマドや断捨離といったライフスタイルで有名ですが、それは彼の一面でしかありません。 個人的には、現世で最も未来を見通せている人物だと思いますが、公開している情報は彼の数%にすぎないとのことで、実際どれだけの未来が見えているのか想像もつきません。 特に、2016/11/18の特別号外は必見。
希望は天上にあり
知財のエキスパートが世の中の最新技術を紹介するブログ。 必見コンテンツは未来予測と算命学。著者の(架空の)知人宛の手紙形式なので読みやすいです。 リンクの記事は、ミチオ・カク氏の書評を兼ねた現実的な未来予測。 hiah.minibird.jp