読書記録 2018夏
前回書き漏らした(書いたけどメモが行方不明になっていた)読書が結構あったので、補足的に。
林檎の木の下で / うめ
★★★☆☆
アップル創業期のスティーブ・ジョブズの伝記漫画の外伝。 当時のIT業界の危うさと、それを日本に「輸入」しようとしたビジネスマンたちの奮闘を描く。
ハードウェアはソフトによって模倣できる
ハードウェア(以下HW)の機能をソフトウェア(以下SW)で再現するというのが、コンピュータ黎明期の至上命題でした。誤謬を恐れずに言えば、アナログな作業をデジタルに置き換えることの一環とも言えます。 上記の引用文は、その設計思想の象徴的な言葉、というわけです。
ちょっとこの引用文で考えてみたことを記しておきます。 結論から書くと、この引用文の思想は「革命」によりすでに逆転されている、と言う話です。
SWへの切り替えの何がウレシイかという話ですが、専用HWで実現していた「機能」をSWに移植することで、設計・製造に高いコストがかかる専用HWを安価な汎用機に切り替えることができます。 この、地道な進歩とたまに起こるイノベーションを繰り返すことで、パーソナルコンピューターは発達してきました。
翻って現代は、逆方向のトレンドです。いわゆるAI、人工知能、ビッグデータと呼ばれるテクノロジーは、これまでにないほどの大量の計算処理を必要とします。その規模はもはや「汎用機」では追いつかないほど。
ではどうするかというと、歴史は逆行するのかどうか知りませんが、「専用機」の出番です。 分かりやすい例では、画像処理を行う専用機のGPUですね。
SWが全てを処理するのではなく、一部の計算処理を専用HWに任せることで、SWのために「汎用」的な計算資源をなるべく空けておく、という設計方針。
最近では、車載機器のソースコードが2億行に達するというニュースもありました。 そんなん一人で計算とか無理。CPUコアが8個になろうが、まだまだ厳しい。
私の観測では10年ほど前から、この「SWのためのHW」の設計思想は現れています。 もはやSWエンジニアの間では常識になっていますが、私はこれはある意味で「革命」じゃないかと思っています。 いえね、結構いるんですよ、SWはHWのおまけにすぎない、と思い込んでいるベテランエンジニアさんが。
ちなみに、本ブログにおける「革命」の定義は、ちきりん氏から。
支配者層と非支配者層のふたつの層が逆転したから革命と呼ばれるのです。
ダラダラ書き殴ってきたんですが、今回はここまで。 HWとSWの逆転が起きたのはいつなのか?が分からないので、今後調べていきたいところです。 IT革命を「パーソナルコンピューター革命」と「インターネット革命」に二分割すると、その間で起きたことのように思えますが、果たして。
林檎の樹の下で -アップルコンピュータジャパン物語- ×スティーブズ外伝
- 作者: うめ(小沢高広・妹尾朝子)
- 出版社/メーカー: ナンバーナイン
- 発売日: 2018/05/11
- メディア: Kindle版
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そうだ、そういえば今回は読書記録だった。続きいきます。
東京トイボックス / うめ
★★★★☆
『大東京トイボックス』は大好きな漫画ですが、その前日譚に相当する作品。 最近Kindle化されたようで(新装版?)、即ポチりました。 『大』よりも荒削りではありますが、むしろこちらのほうが「魂は合っている」かもしれません。
- 作者: うめ
- 出版社/メーカー: うめ
- 発売日: 2013/03/06
- メディア: Kindle版
- 購入: 2人 クリック: 2回
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[KU] 南国トムソーヤ 全3巻 / うめ
★★★☆☆
またまた、うめ先生。 本作は、南国の古代文化と現代の生活の融合がテーマ。
「エコやロハスが全然出てこない沖縄漫画」として各界で話題沸騰!物語が進むにつれ少年たちの友情や恋という王道の展開に加え、沖縄民族学ミステリーや海洋古代史ロマンを盛り込んだわくわくした内容に。さらにはリゾート開発が絡んだ環境問題までにも鋭く切り込んだ意欲作。いまだかつて漫画では語られたことのない南の島の「真実」がここにある。
技術のある漫画家さんなので十分面白いんですが、テーマ的には「なんでわざわざコレ描いたのかな?」という印象。
うめ先生の作品の特徴の1つに、単行本の断章にその作品の用語集が掲載されます。 ここがすごいと思うんですが、そこで紹介される用語は作中でほとんど使われていないのです。 でも、用語集を読むことで作品世界の奥行きが広がっていく楽しさがあり、つい読んでしまいます。
他にも、書籍の発行者は「スタジオG3」だったり。 こういう小ネタも好き。
- 作者: うめ(小沢高広・妹尾朝子)
- 出版社/メーカー: ナンバーナイン
- 発売日: 2018/05/11
- メディア: Kindle版
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ファスナー, July 2042 / 至 乙矢
★★★☆☆
カクヨムに投稿された作品。 『2042年の日常(SFショートショート集)』の一。 VRが貧乏大学生にまで普及するようになった近未来。 技術や環境が変わっても、大学生の日常や思考はそれほど変わらないのかな、と思える。
March 14th, 2028 / 至乙矢
★★★☆☆
こちらも近未来の日常。
最後のネタは初見ではわからなかったので、読み返してしまいました。 あと小さじ1杯くらい、一般向けに説明を寄せてもよかったかなと思います。
#愛と数学の短歌コンテスト
— 数学を愛する会 (@mathlava) 2018年1月28日
バレンタイン
君から貰った
i乗に
何を返そう
3.14
サイバーセキュリティ2020 脅威の近未来予測 / 特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA) 未来予測プロジェクト
★☆☆☆☆
まったく面白くなかった。 技術的にも物語的にも。 2章で読むのやめた。
microsoftの小説のほうが全然おもしろい。
[KU] 魂を燃やすと収入は増える!: お金を稼ぐための「潜在能力の引き出し方」 / 吉田啓司
★★☆☆☆
魂を燃やすと収入は増える!: お金を稼ぐための「潜在能力の引き出し方」
- 作者: 吉田啓司
- 発売日: 2017/07/10
- メディア: Kindle版
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[KU] 美少女同人作家と若頭 / ベニガシラ
★★★★☆
Twitterで人気の漫画家さんの単行本がKindle Unlimitedに登場。 Twitterでだいたい読んでましたが、やはり一気読みしたくなります。
若頭が大活躍で美少女のほうがちょっと影が薄い気もしますが、楽しい作品です。
それにしても「バナナウンコパクパク」ってペンネームやばくね!?
- 作者: ベニガシラ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2017/10/27
- メディア: Kindle版
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[KU] 21世紀の「匿名」ハローワーク: 人には理解されないもうひとつの職業図鑑 / 高城剛
★★★☆☆
表紙の衝撃がすごすぎて(笑)。 内容は、Podcastで聞いていたので新発見はあんまりない。
21世紀の「匿名」ハローワーク: 人には理解されないもうひとつの職業図鑑 (未来文庫)
- 作者: 高城剛
- 発売日: 2018/05/15
- メディア: Kindle版
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[KU] 赤本 / 高城剛
★★★☆☆
著者のメルマガのQ&Aコーナーから、健康と医療についてのトピックを集めた本。受験対策ではありません。
今は数万円出して遺伝子検査を行うことで、アレルギーやら花粉症やら癌の特性やら何でも分かっちゃうらしいです。 そのうちやりたいけど、一番の課題は、その検査結果を読み解ける(かつ信頼のおける)医師を探し出すこと。 これは解決法がない。というか、著者の回答は「足で探せ」。ひぃ。
- 作者: 高城剛
- 発売日: 2018/07/10
- メディア: Kindle版
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まことディストーション (2) / まつだ ひかり
★★★☆☆
かわいい。 レイナの変わり身が中二病すぎて、好き。
まことディストーション 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
- 作者: まつだひかり
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/07/23
- メディア: コミック
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ハロー“Hello, World” OSと標準ライブラリのシゴトとしくみ / 坂井弘亮
★★★☆☆
プログラミングの最初の1歩といえばご存知「Hello, World」ですが、本書ではその裏で何が起こっているのか?を詳しく解説。 具体的に書くと、こんな内容。
まぁお勉強ですわ。 個人的には、標準Cライブラリは使ってませんが、めちゃくちゃ役に立ちました。
ハロー“Hello, World” OSと標準ライブラリのシゴトとしくみ
- 作者: 坂井弘亮
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2016/06/02
- メディア: Kindle版
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スーパー・カルテジアン・シアター (1)-(3) / 六道神士
★★☆☆☆
デビュー当初の勢いはどこへ、といった感じ。 画力と構成力だけは順調に上がっているけど、物語構築がユルすぎる。 まぁお気に入り漫画家なので、追っかけますけどね。
スーパー・カルテジアン・シアター 3 (ヤングキングコミックス)
- 作者: 六道神士
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2018/05/30
- メディア: コミック
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映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』
★★★★☆
クー! 1
http://hiah.minibird.jp/?p=3093
不思議惑星キン・ザ・ザ≪デジタル・リマスター版≫ [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2018/07/04
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友人から借りた映画。前評判のとおり、とんでもない名作だった。あまりにも異文化交流が自然に行われすぎて、なんというか、人生なんでもアリだな、って思える。そして、やっぱり礼儀は、文化とか国とか関係なくコミュニケーションの基本であり前提であるんだな、と再認識。映画を見始めたときはあまりに意味不明過ぎて小馬鹿にしていた「クー!」の挨拶だが、後半になるとむしろ「クー!」が出ると安心してしまう。これが洗脳といわれれば、ひょっとするとそうなのかもしれない(私がこれを観たのは、ちょうど世間がオウム真理教幹部の死刑執行で盛り上がっていた頃だった)。本当に不思議なのだが、異文化をもつ人々の登場の波状攻撃に、むしろ心地よさを感じてしまった。軽くショックだったのが、最後の地球のシーンで周囲の人々が「クー!」をしていないことに違和感を持ってしまったこと。クーーーー!いいんです!↩