アニメ評『色づく世界の明日から』
少し前のアニメーションですが、ようやく録画を見終わったので、感想を書きます。
ストーリー
物語の始まりは数十年後。 日常の中に小さな魔法が残るちょっと不思議な世界。 主人公の月白瞳美は17歳。魔法使い一族の末裔。 幼い頃に色覚を失い、感情の乏しい子になった。 そんな瞳美の将来を憂えた大魔法使いの祖母・月白琥珀は魔法で瞳美を2018年へ送り出す。 突然、見知らぬ場所に現れ戸惑う瞳美の視界に鮮烈な色彩が飛び込んでくる……。
ほんのちょっと魔法が使える主人公が、突然60年前にタイムスリップさせられます。 そこで色をモノトーンでしか見ることができない主人公が見つけたのは、唯一カラーで見える絵。 この絵を描いた画家と出会うことで、ストーリーが始まります。
主人公がモノトーンでしか見えない、という設定は、もちろん「最終回には、どうにか主人公抱える問題が解決して、同時にカラーで見えるようになる」というシナリオを想起するは容易です。 そこまで、どうやって持っていくか、というところがストーリーの腕の見せどころですよね。
個人的には、別れのシーンに弱いので、60年前から現代に戻るときの儀式で泣いてしまいました。
スタッフ
アニメーション制作は、P.A.Works。 とても上質なアニメーションを多く制作する金沢の企業です。 ストーリーはしっかり構築し、細かいところのこだわりがうまく、演出も魅せる。 個人的に、最近注目しているアニメ制作会社です。
P.A.Worksは、過去に『サクラクエスト』も制作。 euphoniumize-45th.hatenablog.com
アニメの基本要素
本作は、タイトルからも分かるように、色彩が非常に重要な作品です。 そして実際、本当に色使いが綺麗です。
前述のように、主人公がモノトーンでしか見られません。 すると、主人公視点のときにはグレースケールに、第3者視点のときはカラフルに、と画面の色も変わります。 ただでさえ綺麗な色使いの画面を、そのコントラストで見せられると、分かっていても毎回ハッとしてしまいます。 ただストーリーに沿って絵を起こしたわけではなく、絵とストーリーが互いに連携している、と言えましょう。
音楽も同様です。特に主題歌。 イントロのコーラスで、豊かな色彩を想起させるハーモニーとピアノリフで期待感をもたせます。 AメロBメロでは、使うコードを限定し、メロディの抑揚も抑える。そして、サビで一気に盛り上げる。 ポップスでよく使われる典型的な手法ではありますが、こうした楽曲を本作の主題歌に持ってくることで、これも視聴者にストーリーを強く意識させることに成功しています。
こういうベタなのは、個人的にとても好きなのです。 というか、ベタをやるなら高品質でなければ成立しませんので、ちゃんとやるのは案外難しいのです。王道とも言いますね。
私はアニメーションについて、原画、動画、音楽、ストーリー、声優、演出などの要素を複合的に組み合わせて構築する総合芸術だと考えていますが、上記のように、本作はまさにこれらがストーリーを中心に、互いに密接に結びついた作品です。
こういう上質な作品は、なかなかお目にかかれるものではありません。1年に1作品あれば良いほうです。 たいてい、音楽だけ浮いていたり、絵が良いのにストーリーが荒かったり、細かい演出が残念だったりします。
本作は、マンガをただ動かすだけのなにかとは、明らかに一線を画す、まさにアニメーションならではの表現をしています。 むしろ映画に近いかもしれません(別に映画がアニメの上位に位置するとは考えていませんが、アニメに関していえば総じてクオリティが高いのはTVより映画に多い、という意味です)。
まとめ
なんか褒めすぎたような気がしますが、個人的な好みにだいぶハマったので思ったまま書きました。

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