書評『サピエンス全史』(1/8)
概要
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/16
- メディア: Kindle版
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イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による、人類の歴史の全てを簡潔にまとめた、世界的ベストセラー。
これが超絶面白かったので、シリーズ化して書評を書いていきたいと思います。
(こちら↓は本書に全く関係ありませんが、BGM代わりにどうぞ)
『サピエンス全史』全体の感想
7万年に及ぶ人類の歴史を、 非常にわかりやすい問題提起とそれに対する仮説、さらにその仮説を裏付ける豊富な事例を提示し、 簡潔にとてもわかりやすく提示しています。
このような場合、得てして専門家の豊富な知識によって、素人が反論しにくい論理になってしまいがちです。 しかし本書では、単純化においても、事例や引用においても、著者はなるべく公正な記述を心がけています。
少なくとも私はそう感じます。 なぜかというと、著者がマクロ視点の歴史学者だから。
ここ数年のトレンドや「いま」偉い教授が正しいと言ったことであっても、万年単位でモノを考える職業にとっては、そんなものがすぐ(場合によっては数百年単位で)移り変わっていくものであることを知っているわけです。
例えば、いまや常識となったiPhoneが世に初めて生まれ落ちたのは2007年ですが、たった10年前です。 10年前には、ほとんどの人がスマホなんて持っていなかったというのも、改めて振り返ればものすごい話です。
では、PCは?
電気・ガス・水道・交通などの生活基盤は?
資本主義は?
民主主義は?
科学技術は?
食物は?
そして、我々人類はいつから「こう」だった?
ある意味でかなり即物的に、人類がこれまで辿ってきた道筋を描きます。
私は、著者が宗教や政治的イデオロギーなどセンシティブなテーマも、感情的にならずにあくまで冷静に、ただし他人事ではなく、この時代に生きる当事者として歴史を振り返ることを意識していることに、非常に驚きました。 そして、そのために専門外の知識までかなり詳しく網羅していることにも驚きです。
著者のこのスタンスが、ベストセラーの所以かと思います。
『サピエンス全史』の読み方
本書に限りますが、オススメの読み方をご紹介。
世界地図を一緒に見ましょう。
Google Maps(とWikipedia)で充分です。 どこで何が起きたのか、なんてどうせ覚えられないので(少なくとも私は)、 覚えなくてよいので、とりあえず本書で登場する地名を地図を探しましょう。
もしスマホがなくて、紙の本で持ったら何キロでしょうね。そう思えば、現代はほんとにすごい時代だな。
そしてもう一点。
内容は衝撃的な(これまでの自分の常識が覆されてしまうような)ものが多いので、読者によっては気分を害する記述もあるかもしれません。
ですが、そこで感情的になる前に、まず本書における著者の切り口を知ってほしいのです。
著者は本書で、人類に向けて「これまでの、そしてこれからの人類について議論しようぜ」という最高のステージを作りあげました。
無知による誤解をしたまま議論するのはもったいないです。まずは前提知識を揃え、その上で冷静に議論しましょう、ということです。
もし本書を読んで、カッとなったり、苦しかったり、ある意見に偏ってしまったなら(それはそれで大切にしたい感情や意見だと思いますが)、これまでの自分の常識を冷静に疑ってみることが必要なのかもしれません。
人類とは
本書では、若干特殊な用語の使い方を、しています。それぞれしっかり定義されているので心配はありませんが、象徴的なものを紹介すると、こんな感じ。
タイトル通り、サピエンスに焦点をあてた本書ですが、地球に生きるものとして、サピエンス以外の動物についても対等に扱っています。 もちろん記述量のことではなく、生物としての価値に上下などないということです。人間様がどれだけ偉いのか、本書には本当に考えさせられる記述が頻発します。
書評シリーズ構成
書評というか、ほぼ個人的な読書メモになりますが、何回かに分けて書いていきたいと思います。 (おそらく)本書の章構成にある程度沿っていく形になると思います。
- 『サピエンス全史』第1部
- 『サピエンス全史』第2部
- 『サピエンス全史』第3部
- 『サピエンス全史』第4部